新しい CAD を実装するための 8 つの手順

ロバート・グリーン 氏

この記事は、CAD ユーザーに向けた、ソフトウェア/ハードウェアに関する情報、アドバイスやヒントの提供を専門とする米国の雑誌・ Web サイト『Cadalyst』の編集者によるものです。発行者の許可を得て発行しています。
Cadalyst
新しいアプリケーションを展開しユーザーに必要な情報を与えるという複雑なプロセスを、CAD マネージャーが確実に遂行するための 8 つの手順

新しいソフトウェアの実装が近づいたら、CAD マネージャーとして多忙な日々が待ち受けていると覚悟しなければなりません。 穏やかな心を保ちながらプロセスをできるだけスムーズに進めるための、最善の方法とは何でしょうか。

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このホワイトペーパーでは、新しいソフトウェア リリースを展開するためのベスト プラクティスを紹介し、環境に合わせて実装するプロセスと診断方法を順を追って説明します。 それでは、始めましょう。

成功に導くプロセス

既存のツールに適用するシンプルなアップデートの場合も、これまでとはまったく異なるソフトウェアを導入する場合も、新しいソフトウェアを実装する際には、重要な一連の手順(ベスト プラクティス)に従う必要があります。 実装を成功に導くために、私が推奨する手順を次に示します。 それぞれの手順の詳細については、後のセクションで説明します。

 

  1. テスト展開を実施する
  2. 最初のプロジェクトを決定する
  3. 標準を確認して修正する
  4. トレーニング プランを立てる
  5. 最初のトレーニング対象者を選択する
  6. 段階的な実装戦略を策定する
  7. ユーザーと経営幹部に説明する
  8. 実装を開始する

手順1: テスト展開(必須)

新しいソフトウェアを実装する前に、必ず綿密なテスト展開を実施します。 「ソフトウェアのテスト展開を成功させるための CAD マネージャー向けガイド」で説明しているように、テスト ユーザー グループの力を借りて、ソフトウェアの機能、インストール キット、構成、IT の課題、および操作性を検証し、そのソフトウェアが実際に運用可能かどうかを確認することが不可欠です。

また、そのソフトウェアの実装を決定した場合には、テスト展開で得られた結果を活用することで、実装前の作業の多くが簡素化されます。 ソフトウェアをエラーなくスムーズに実装するために、テスト展開を実施する必要があることは明白です。

手順 2: そのソフトウェアを最初に使用するのに適したプロジェクトの決定

プロジェクトの実行中に、ソフトウェアのバージョンを変更したり、新しいツールを導入したりすると、プロジェクトの進行に遅れが生じる可能性があります。 トレーニングで遅れが出たりワークフローが混乱したりするだけでなく、ソフトウェアのアップグレードによって、社員や顧客が使用している前バージョンのソフトウェアとの間でファイルの互換性の問題が生じることもよくあります。 プロジェクトの実行中に新しいソフトウェアを展開することは、明らかに不適切です。

予定されている新しいプロジェクトから、そのソフトウェアの使用を開始するのが適切な方法です。 また、予定されている中で最初のプロジェクトという理由だけで決定せず、新しいソフトウェアに最も適したプロジェクトを検討する必要があります。 新しいソフトウェアを最初に使用するのに適しているのは、次のような性質のプロジェクトです。

  • 妥当なサイズである。 携わる人数が少ないプロジェクトは、ソフトウェアの移行に伴うサポートや管理が容易です。
  • ユーザーが有能で協力的である。 ソフトウェアに習熟し、新しいソフトウェアの導入に積極的に取り組んでくれそうなユーザーが携わるプロジェクトを選択します。
  • プロジェクト マネージャーが協力的である。 プロジェクト マネージャーが新しいソフトウェアの実装を支援し、課題やプロジェクトの遅れが発生しても前向きに協力してくれる場合は、作業が大幅に容易になります。

これらの条件が満たされないと、ソフトウェアの実装に失敗する可能性が高まります。 CAD マネージャーとして、最初にそのソフトウェアを使用するのに最も適したプロジェクトを選択することが、ソフトウェアを迅速かつ効率的に実装するための最も確実な方法です。

手順 3: 標準の確認および修正

テスト展開の結果は、ソフトウェアの使用をどのように標準化するかを判断する際の基準になります。 テストでは、標準のブロック、ファミリ、ライブラリからプロジェクトのファイリング手順まで、さまざまな事項を確認します。そのため、ソフトウェアの使用方法を正式に標準化する際に、テストで確認した結果を反映できます。

最初のプロジェクトを管理するために必要な標準をどのように設定するか。 次のチェックリストと照らし合わせて、すべての事項がカバーされているかどうかを確認します。

  • 顧客が図面に求める標準
  • フォルダー構造の申請
  • BIM (ビルディング インフォメーション モデリング)のコーディネーション プラン
  • テンプレートまたはその他のプロジェクト始動ファイル

ソフトウェアの実装中に標準を変更すると、プロジェクトの複雑さと負担が増すだけです。 前もって標準を確立することで、こうした問題を回避できます。

手順 4: トレーニング プランの策定

ここで、すべての要素を組み合せ、ユーザーに新しいソフトウェアを紹介してトレーニングを実施するプランを立てます。 テスト展開で確認した事項に基づいてトレーニング戦略を立て、統制のとれた方法でトレーニングを実施するためのトピック リストを作成します。

トレーニングのトピック リストを作成する際には、次の点に留意します。

  • ユーザーが今後必要とする主な機能についてトレーニングします。
  • ユーザーが使用することのない、補助的な機能については除外します。
  • 実際のプロジェクトを反映した環境で学習できるように、実際のプロジェクト データを使用します。
  • 作業環境を反映していない例は使用しません。
  • トレーニングで使用する例に会社の標準を組み込みます。
  • トレーニング中、ユーザーが標準から逸脱しないように指導します。
  • 長時間にわたる 1 つのセッションではなく、いくつかの短いセッションを実施して、ユーザーが集中力を維持できるようにします。
  • 経営幹部に対しては、就業時間外にトレーニングを実施するように配慮します。
  • 実装の成否がかかっていると考えてトレーニングを実施します。
  • トレーニングは必ず実施します。

 

私の経験上、これらの点に十分に注意することで、トレーニングは必ず良い結果をもたらします。 このリストのコピーをデスクに置いて、トレーニング プロセス中に確認してください。

手順 5: 最初のトレーニング対象者の選択

ユーザーのトレーニング方法についてはさまざまな相反する意見がありますが、最初の対象者として適切なユーザー グループを選択することが、成功の鍵となります。 最初にトレーニングを受けたユーザーが良い結果を出せば、その後の実装段階が円滑に進みます。

トレーニングの最初の対象者を選択する際に私が設定している条件は次のとおりです。

  • プロジェクトへの参加が見込まれる人。 対象となるプロジェクトに参加し、そのソフトウェアを実際に使用する可能性が高い人を選択します。 
  • ソフトウェアの習得に積極的な人。新しいソフトウェアの習得を最も希望している人です。 トレーニングが終わった後も、自らソフトウェアの習得に取り組む意欲のある人を選択します。
  • キャリア確立に熱心な人。トレーニングを仕事面でのメリットと考える人を選択します。Project prospect. Who’s most likely to be on the first project team so they can actually use the software?

これらの条件に基づいて、新しいスキルをプロジェクト作業にすぐに活用できる、意欲的かつ熱心なユーザーのグループを構築します。 これらのユーザーは、自発的であるためサポート要求が少なく、専門知識を短期間で身に付けることができます。

付加的メリット: このグループに対するトレーニングが終了した後、トレーニングに関するフィードバックを得て、以降のトレーニングを改善することができます。

手順 6: 段階的な実装プランの策定

「サポート対応に追われずに新しいソフトウェアを導入するにはどうしたらよいか」と悩むことがありますが、 徐々に導入することが最善の方法です。 プロジェクトごと、ユーザー グループごとに、会社の作業負荷に合わせたペースで段階的にソフトウェアを導入し、トレーニングを重ねることです。 実行可能な戦略を立てるための、いくつかの検討事項を確認してみましょう。

プロジェクトの作業負荷。 1 年のうちに開始するプロジェクトの数はどのくらいですか。 プロジェクトの数を確認すると、新しいソフトウェア バージョンについてすべてのユーザーをトレーニングするのに必要な期間を、適切に把握できます。

  • プロジェクトのスケジュールに合わせてトレーニングを実施する。 ユーザーがトレーニング後すぐに実際のプロジェクト作業に入れるように、トレーニングの時期を調整します。 トレーニングの実施が早すぎて、プロジェクト作業の開始までに時間があると、習得したことを忘れてしまいます。
  • 適切なサポートを得られるようにする。 多数のユーザーを一度にトレーニングする場合、トレーニングに対する支援や技術サポートを増強する必要が生じることがあります。 こうしたニーズを必ずプランに組み込みます。
  • プロジェクト マネージャーと緊密に連携する。プロジェクト マネージャーは、新しいプロジェクトがいつ開始するのかを最もよく知っている人々であり、トレーニング プログラムをどの程度迅速に実施する必要があるかを判断する際に手助けしてくれます。

段階的なトレーニング。 最初にトレーニングを受けたグループが実際のプロジェクトでその成果を見せたら、次の新しいプロジェクトの開始に合わせて、次のグループにトレーニングを実施します。 次のグループは、最初のグループの次に前述の条件を満たした人々のグループです。 2 番目のグループは最初のグループよりも意欲や自発性の面で多少劣っているかもしれませんが、最初のトレーニングで得た経験がメリットになります。また、最初のグループのメンバーに、メンターとして 2 番目のグループをサポートしてもらえるメリットもあります。

スケジュール。 各トレーニング セッションにどの程度の時間がかかりますか。 ユーザーが新しいソフトウェアを習得するのにどの程度の時間が必要ですか。 すべてのユーザーのトレーニングが終了する前に開始するプロジェクトの数はどのくらいですか。 これらの時間や数を確認することで、トレーニングのスケジュールを立てることができます。 トレーニングおよび実装プランの承認を求めて管理職にプレゼンテーションする際には、スケジュールが重要な要素になるため、スケジュール設定には特に注意を払う必要があります。

反対意見への対応。 反対する人、 無鉄砲な人、 疑い深い人、 不平を言う人、 こうした人たちはよくいます。 さまざまな理由を付けて、新しいソフトウェアに反対する人たちです。 しかし、段階的に実装を進めることで彼らの反対意見を打ち負かす結果を出し、最終的にはトレーニングに導くことができます。 たとえば、反対意見に対して次のように答えることができます。

  • 「このソフトウェアは使い物にならないよ。」 これまでのところ、皆が適切に作業できています。
  • 「このソフトウェアは習得するのが難しすぎる。」 トレーニングに参加した人は皆よい結果を出し、使いこなしています。
  • 「今までのやり方のほうが早く作業できるよ。」 皆、最初はそうでした。しかし、新しいソフトウェアを使い始めてからしばらくたつと、新しい方が早く作業できると分かりました。

この時点で、頑固なユーザーも新しいソフトウェアの習得に同意します。または、自分に習得する能力がないことを認めます(本当は誰もそんなことを認めたがりませんが)。 これが、反対意見への鉄壁な対応です。

手順 7: ユーザーと経営幹部に説明する

テストが完了し、プランを策定したら、ユーザーと経営幹部に新しいソフトウェアへの切り替えとそのスケジュールについて説明します。 次に示す理由から、ここで適切な説明を行い、同意を得ることが不可欠です。

  • ユーザーが歓迎しないソフトウェアを CAD マネージャーが実装することはできません。
  • 経営幹部がサポートし、資金を提供してくれなければ、CAD マネージャーがソフトウェアを実装することはできません。
  • 1 晩でソフトウェアを実装できる CAD マネージャーはいません。現実的なスケジュールを作成することが不可欠です。

実装前に、すべての人に適切に把握してもらうことが重要です。 予期したとおりに物事が進んで初めて、人は納得してくれます。そのための唯一の方法は、できるだけ容易な方法で実装する手順を伝え、教育し、明確化することです。 次に、実証済みの説明方法をご紹介します。

ユーザー向けの説明:

  • トレーニングとサポートを提供することを強調する。 使ったことのない新しいソフトウェアは、ユーザーにとって強いストレスになります。 トレーニング プログラムの具体的な内容の一部を紹介して、確実に習得できることを保証します。また、利用可能な技術サポートについても詳しく説明します。
  • おおまかなスケジュールを設定する。 新しいソフトウェアの導入によってユーザーにいつ影響が出るか、おおまかなスケジュールを伝えて、準備を整えておくように促します。

 

経営幹部向けの説明:

  • 綿密に準備したことを伝える。 プロジェクト選定、トレーニング トピック、および段階的実装に関するメモを見せて、その方法に対して信頼を得るようにします。
  • トレーニング プランを伝える。トレーニングの対象者と実施時期の概要を伝え、その理由を説明します。 トレーニングにかける時間を短く抑えていること、かけた時間から最大限のメリットを得られることを強調します。 コスト管理に配慮してトレーニングを設定している事実に、経営幹部は満足します。
  • トレーニング期間の予定を共有する。 トレーニング期間が 2 週間であれ、2 カ月であれ、2 年間であれ、情報を共有し、その予定を立てた理由について答えられるように準備します。 トレーニング期間が長すぎると言われた場合にその予定を守り抜くには、数値を使って答える必要があります。
  • 承認を求める。プロジェクト選択、トレーニング プラン、およびスケジュールに対する承認を求めることによって、経営幹部が疑念を抱いているかどうかが分かります。 承認された場合は、実行に移すだけです。 何らかの変更を求められた場合は、承認を得るために何を修正すべきかが分かります。 どちらの場合も経営幹部が決定を下すことになり、最終的に実装が開始したときには、すべての人が落ち着いて作業することができます。

手順 8: 実装の開始

最初のユーザー グループに対するトレーニングを実施し、新しいソフトウェアを使用する最初のプロジェクトが開始すると、そのプロジェクトを管理し、発生した問題に対処する必要が生じてきます。 問題に取り組む際には、解決策を必ずすべてのユーザーに伝え、必要に応じてプロセスを更新します。そうすることによって、ソフトウェアの実装がよりスムーズになります。

次の手順を踏むことが、プロセスを最も効果的に管理するのに役立ちます。

  • ユーザーに情報を伝える。 新しい情報を口頭で伝えるだけでは不十分です。 短い電子メールや製品資料を作成して、更新情報、ヒント、新しい手順など、ユーザーの役に立つ情報を伝えます。
  • 標準を更新する。 新しい手順を導入し、手法を改善した場合は、それに従って標準のドキュメントを更新します。
  • 現場に頻繁に姿を見せてユーザーと接する。 マネージャーが現場にいると、抱えている問題をユーザーが相談しやすくなります。マネージャーは問題を最小限に抑え、早期に解決するための措置を講じることができ、長期的に見れば、時間の節約と問題の解消につながります。

まとめ

新しいソフトウェアの実装が困難なプロセスであることは事実です。 しかし、可変要素や発生する可能性がある問題をすべて予測し、確固としたプランを立てることによって、ほぼすべての問題に対処する準備が整います。 経営幹部とユーザー チームがそのプランを前もってサポートしてくれれば、ストレスを最小限に抑えてプロジェクトを実行できます。

ロバート・グリーン 氏は、1991 年から、米国、カナダ、およびヨーロッパで、CAD 管理に関するコンサルティング、プログラミング、トレーニング、およびテクニカル ライティングのサービスを提供してきました。 熟練したメカニカル エンジニアでもある ロバート氏は、1985 年以降、広く普及しているさまざまな CAD ツールをさまざまなエンジニアリング環境で使用してきました。 作業環境を問わず常に優秀な CAD ユーザーであった ロバート氏ですが、CAD 管理の知識は実際の現場で身に付けたものです。 経験を積んで行くうちに、CAD 管理に伴う技術的な課題やトレーニングに関する課題に興味を持つようになり、現在では、講演を通じて CAD 管理者の指導にあたっています。 Robert 氏は、Cadalyst 誌で執筆している記事と、著書『Expert CAD Management: The Complete Guide』(出版社: Sybex)で広く知られています。 執筆活動をしていないときは、自身が経営する Robert Green Consulting (ジョージア州アトランタ)にてコンサルティング業務を行っています。お問い合わせには、同氏の Web サイト www.cad-manager.comをご利用ください。