CAD マネージャーが IT 担当者と円滑にコミュニケーションを取るためのヒント

ロバート・グリーン氏

この記事は、CAD ユーザーに向けた、ソフトウェア/ハードウェアに関する情報、アドバイスやヒントの提供を専門とする米国の雑誌・ Web サイト『Cadalyst』の編集者によるものです。発行者の許可を得て発行しています。
Cadalyst

IT 担当者の課題と用語を理解すれば、最適なソフトウェア パフォーマンスとファイル セキュリティを確実に実現できます。

 

CAD ツールは次第に、サーバー、ライセンス管理アプリケーション、クラウド データ リポジトリにリンクされるようになっています。また、企業の広域ネットワークやクラウドベースの接続を介して他のオフィスに接続することも珍しくありません。これらのテクノロジーは CAD 環境に定着しているため、CAD マネージャーは必然的に IT 部門とより多くやり取りするようになります。もちろん、IT スタッフが納得するやり方で彼らとコミュニケーションをとる方法を知っていれば、このプロセスはずっとシンプルになるでしょう。

この記事では、IT 部門と CAD に関して生産的に会話できるようになるために、IT ナレッジベースと用語を身につける方法をご紹介します。それでは、始めましょう。

主な問題

私は『Cadalyst』の読者との電子メールのやり取り、業界イベントでの何百人もの CAD マネージャーとの会話、そして個人クライアントへのコンサルティングから、CAD マネージャーにとって、以下が対処すべき最も重要な IT 問題であると考えるようになりました。

 

  • IT の位置付けの理解
  • 帯域幅とレイテンシー
  • ファイル セキュリティ
  • 権限
  • クラウド アプリケーションの権限
  • 管理サポート作業の権限
  • ネットワーク変更の予期

もちろん、皆さんに影響のある他の IT 問題もありますが、これらが最も一般的な問題であるため、ここではこれらに焦点を当てます。

まず、IT の位置付けを理解する

第一に、インターネットが職場に広がるのに応じて、IT 部門が対処しなければならなくなった課題について少し考えてみましょう。IT 部門がメンテナンスを行い、セキュリティを確保しなければならないすべてのものについて熟考してみれば、IT が企業のリソースについて保守的である理由が簡単に分かるでしょう。以下の懸念について検討してみてください。

 

  • 許可を受けていないネットワーク インターネットの使用(ゲーム、Facebook など)
  • 許可を受けていない高帯域幅のストリーミング メディア(Pandora、YouTube、Netflix など)
  • 一見安全な Web サイトに埋め込まれたマルウェア/ウィルスの脅威
  • クラウド アカウントのハッキング/データ損失

最優先される IT 部門の任務は、企業の資産のセキュリティを保護し、本来のビジネスに使用できるようネットワーク リソースを保持することであることに異存はないでしょう。IT スタッフがこれらの目標を達成するための最も簡単な方法は、その適合性を完全にテストしていないすべてのものをブロックまたは無効にすることです。インターネットに対応した CAD ユーティリティがこれに含まれることも珍しくありません。

今後 IT 関連の課題に対処するときは、この現実を念頭に置き、企業リソースの適切な使用も自分の優先事項と考えていることを IT 部門のスタッフに確実に伝えてください。

帯域幅とレイテンシー

広域ネットワーク(WAN)やクラウドベースのデータ ストレージを利用して CAD アプリケーションを実行するという話題になると、ネットワーク帯域幅とレイテンシーの概念が取り上げられることは珍しくありません。この文脈では、これら 2 つの用語を以下のように定義できます。

帯域幅: ここでは、WAN 内のネットワーク サーバー間をファイルが移動できる最高速度。多くの場合 1 秒あたりのメガビット数(Mb/sec)で示されるこの値によって、大きな CAD ファイルを複数の場所で共有する際の最大速度が決まります(Mb/sec は 1 秒あたりのメガバイト数(MB/sec)とは異なります。1 バイトは 8 ビットです)。

レイテンシー: リモート サーバーにアクセスしてから、応答があるまでの最大時間。多くの場合ミリ秒(msec)で示されるレイテンシーが注目されるのは、CAD サーバーがファイルのロードやプロジェクト フォルダーの更新などを行うために、リモート サーバーへの多数のアクセス リクエストを行うときです。

20 MB のファイルをサーバー間でコピーするために 5 分かかる場合は、帯域幅の制限によりファイル転送に遅延が発生しています。一方、現在の帯域幅からすればもっと速くロードできるはずなのに、10 MB の Revit プロジェクトのロードに 20 分もかかる場合は、レイテンシーによる影響をかなり受けています。プロジェクト ファイルをロードするためのリクエストに長い時間をかけるため「おしゃべり」とも呼ばれる CAD アプリケーションで、レイテンシーにより大幅な遅延が発生することは珍しくありません。

知っているべき理由: IT 部門は、CAD プロジェクトをロードするためにいかに多くのファイル リクエストが実行されているかを理解していないことが多々あります。言い換えれば、IT 部門は帯域幅を問題であると考える傾向がありますが、CAD マネージャーには真の問題はレイテンシーであることが分かっているのです。

コミュニケーションのためにすべきこと: WAN 内のサーバー間で CAD ファイルを開くためにどのくらいの時間がかかるかを IT スタッフに対して実演します。これによって、彼らもユーザーの困難を理解できるでしょう。その後、真の問題を解決するための方法について話を始めます。

ファイル セキュリティ

ファイルを失くしたいと考える人はいないでしょうが、IT 部門のこだわりは群を抜いています。そして、それにはもっともな理由があります。大規模なデータ損失が及ぼす影響を考慮すると、この問題は企業にとっていかに高くつく可能性があるかが分かるでしょう。以下に、CAD 中心のデータ損失のシナリオを示します。

  • ユーザーが、ネットワークまたはクラウド アカウントにあるファイルを表示している間に、誤ってフォルダーを削除してしまった
  • ユーザーが、古いファイルをコピーして新しいファイルを上書きしてしまった
  • ファイルやディレクトリを間違った場所に置いた、または C ドライブにコピーしてしまった

知っているべき理由: IT スタッフは最悪の事態を想定し、データ損失のおそれを最小限に抑えるためにネットワークをロック ダウンしなければなりません。IT スタッフはもともと、データ損失の恐怖を抱えながら問題に対処するものです。

コミュニケーションのためにすべきこと: IT スタッフに、自分が彼らの不安を理解していることを明確に伝えます。互いに協力して CAD データにアクセスできる人物を注意深く制御し、適切な担当者のみが適切なツールにアクセスできるように、ファイル権限を完全に管理する計画を立てます。

権限

IT 部門がファイルのセキュリティを守るうえで最大の武器は、ネットワーク権限の使用です。ここで、便利な用語をいくつかご紹介しましょう。

権限: ユーザーがファイルまたはディレクトリを読み取り、書き込み、上書き、削除するために持っているアクセスのレベル。すべての権限を与えられた場合、フル コントロール権限を持っていると言います。

指名ユーザー: ユーザーのログインとパスワードを組み合わせたもの。

グループ: 同じ権限を全員が受け取るユーザーの集合体。

管理者: コンピューターまたはネットワーク サーバー上のファイルおよびフォルダを完全に制御できるスーパー ユーザー。

これらすべてを CAD の文脈で考えてみましょう。電気エンジニアのユーザーが複数いる場合、彼らを 1 つのグループにまとめ、電気 CAD ファイルを含むディレクトリ内のファイルを作成/編集/削除できる権限を与えます。さらに、主任電気エンジニアが新プロジェクト用にフォルダーを新規作成する必要があるかもしれないので、電気フォルダー構造全体のフル コントロール権限をこの主任エンジニアに与えなければなりません(ただし、この主任エンジニアにネットワーク サーバー全体の管理者レベルの権限を与えるべきではないでしょう)。

知っているべき理由: CAD マネージャーは、どのユーザーがどのグループに属していて、どのフォルダーにアクセスする必要があるかを IT 部門に伝える必要があります。

コミュニケーションのためにすべきこと: ユーザーが必要とするファイル、フォルダー、ネットワーク権限を書き出し、それを IT に提示して設定してもらいます。IT スタッフは CAD アプリケーションの動作を把握していないため、CAD マネージャーがあらかじめ CAD アプリケーションを正しくセットアップするための準備をしておくと喜ばれることを覚えておきましょう。

 

クラウド アプリケーションの権限

クラウドベースのアプリケーションとストレージでは一般的に、ユーザーが自分のディレクトリにだけログインできる基本権限構造になっています。ただし、チームがフォルダーを共有できる CAD アプリケーションもあり、この場合、複数のユーザーが共有ファイルにアクセス(およびファイルを上書きまたは削除)できます。このセキュリティ構造は時に明確ではなく分かりづらいことがあるため、権限が見過ごされたり無視されたりします。

知っているべき理由: クラウド アプリケーションがデータのセキュリティをどのように確保するかを理解することは不可欠です。これは、IT 部門と議論できるようにするためだけでなく、ユーザーが貴重なデータをうっかり削除してしまうリスクを理解するためでもあります。

 

コミュニケーションのためにすべきこと: IT 部門にクラウドベースの CAD システム コンポーネント(Autodesk Application Manager や Autodesk 360 など)を導入して欲しいなら、そのアプリケーションがデータのセキュリティをどのように確保するのか、また権限がどのように制御されるのかを IT 部門に示すことができなければなりません。逆に、IT 部門からクラウドベースのツールを使用するように言われた場合は、確信を持ってプロジェクトのデータを制御し、不注意なデータ損失を回避できるように、IT 部門からセキュリティ機能に仕組みに関する説明がなければなりません。

日々新しいクラウド アプリケーションが誕生しており、すべてがそれぞれ異なっています。すべてを徹底的に調査し、どのアプリケーションもその安全性が証明されるまで、安全であると考えないようにしてください。

 

管理サポート作業の権限

権限について言えば、ツール、データ、周辺機器の管理の責任を負う CAD マネージャーが、日々の作業に対処するために必要な管理レベルの権限を持つことは妥当ではないでしょうか。こうした作業には、以下のようなものがあります。

  • ユーザーのマシン上でのソフトウェア バージョンの更新
  • ユーザーのマシンへの新しいソフトウェアのインストール
  • ネットワークでのディレクトリ構造の作成/変更/移動
  • プリンター ドライバーのインストール/変更
  • ユーザーのマシンへの周辺機器の取り付け
  • クラウドベースのツールでのユーザー権限の変更

知っているべき理由: CAD マネージャーは、ユーザーを迅速にサポートし、事態を好転させることを期待されていますが、こうした作業を実行するために必要な管理権限を持っていなければ、CAD の生産性は停滞し、IT スタッフの介入を待たざるを得なくなります。必要な管理権限が与えられれば、IT スタッフに迷惑をかけることはないことを彼らに説明してください。

コミュニケーションのためにすべきこと: 実例を挙げ、自分がさらされているプレッシャーを IT 部門に知らせます。IT 関連作業を実行するよう CAD マネージャーにプレッシャーをかけるプロジェクト マネージャーやユーザーについて話してください。管理権限がなければより困難になる、日々対処しなければならない作業について IT 部門に説明します。

 

ネットワーク変更の予期

全員の CAD ツールを混乱に陥れた「ちょっとしたプリンタ交換」や「簡単なサーバー アップグレード」を経験したことのある方なら、ネットワーク設定されたデバイスの変更が問題を引き起こすことがあることをご存知でしょう。しかし、通常はこうした問題には事前に備えることができないため、このようなタイプのネットワーク変更が問題を引き起こすかどうかを確かめる方法がないか、という話になります。考え得る原因を理解するために、ここでいくつかのシナリオを取り上げましょう。

周辺機器のドライバー: ドライバーは、ネットワーク プリンター/プロッター(およびその他の周辺機器)をユーザーの CAD ツールに接続するソフトウェア コンポーネントです。ドライバーを更新しても問題のないときもありますが、32 ビットのドライバーを 64 ビットのドライバーに更新する場合など、運用が中断されることもあります。また、別の例として、CAD スクリプト ツールや自動化ツールはドライバーによって有効になる特定のコマンド プロンプトに依存しているため、新しいドライバーが原因で自動化ツールが実行を停止することもあります。

UNC パス設定: 通常のドライブ パスとは異なり、UNC パスは \\servername\share という形式を使用します。つまり、たとえば X ドライブが CADSERVER というサーバーにあり、共有が XDRIVE である場合、X ドライブへの UNC パスは \\CADSERVER\XDRIVE となります。ここで、IT 部門が X ドライブを新しい場所 \\NEWCADSERVER\XDRIVE に移動したとします。この場合、古い UNC パスをポイントするすべての CAD ファイルが見つからなくなってしまいます。外部参照に大問題を引き起こすことが考えられます。

知っているべき理由: CAD マネージャーは、周辺機器と共有ドライブに影響を与えるネットワーク パラメーターに関する実用的な知識を持っていなければなりません。その理由は単純で、これらは職務の遂行に欠かせない要素であるためです。

コミュニケーションのためにすべきこと: ネットワークの変更によって発生する障害を理解してもらえるように、前述のシナリオ例を IT スタッフに十分に把握してもらいます。また、IT スタッフに新しいリソースのテスト中は古いネットワーク リソースをそのまま残してもらい、新しい問題が発生しても古いシステムが稼働している間にその問題を修正する時間を持てるようにします。

これらは発生し得るネットワーク問題の一部に過ぎませんが、CAD マネージャーに影響を与える問題の多くは、ここまでご説明したような単純な事例です。

 

まとめ

CAD マネージャーの皆さんが IT 関連の課題の多くに対処する際に、今回のアドバイスがお役に立てれば幸いです。ここでご紹介したコミュニケーションのヒントと用語を活用すれば、IT 部門とのやり取りがさらに円滑になり、CAD ツールの実行に関する問題が削減されるでしょう。

ロバート・グリーン 氏は、1991 年から、米国、カナダ、およびヨーロッパで、CAD 管理に関するコンサルティング、プログラミング、トレーニング、およびテクニカル ライティングのサービスを提供してきました。 熟練したメカニカル エンジニアでもある ロバート氏は、1985 年以降、広く普及しているさまざまな CAD ツールをさまざまなエンジニアリング環境で使用してきました。 作業環境を問わず常に優秀な CAD ユーザーであった ロバート氏ですが、CAD 管理の知識は実際の現場で身に付けたものです。 経験を積んで行くうちに、CAD 管理に伴う技術的な課題やトレーニングに関する課題に興味を持つようになり、現在では、講演を通じて CAD 管理者の指導にあたっています。 Robert 氏は、Cadalyst 誌で執筆している記事と、著書『Expert CAD Management: The Complete Guide』(出版社: Sybex)で広く知られています。 執筆活動をしていないときは、自身が経営する Robert Green Consulting (ジョージア州アトランタ)にてコンサルティング業務を行っています。お問い合わせには、同氏の Web サイト www.cad-manager.comをご利用ください。